女性のキャリアアップが、会社を体裁よく見せるためのツールのよう。こんなとき、どうする? 《ジェンダーギャップ編-11》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
地方銀行の本店で、課長を務めるハルさん。このご時世で会社としては女性管理職比率を上げたいのはわかるけれど、現場では実際に働く女性たちの思いが交錯しています。渦中の社員や上層部の様子をミドルマネジメントだからこそ目の当たりにしてきた、ハルさんのケーススタディです。
女性管理職比率を上げたい会社の、昇格試験の現状
入行した当時は、女性管理職は一支店に一人もいないような状況でした。今は支店に一人ずつくらいでしょうか。
やっぱり、会社としても、女性を引き上げようという動きがあります。明確に数値目標も掲げるようになりました。
そんななか、最近、部下の女性の一人が落ち込んでしまっているんです。
チームのうち3人の女性が、昇格試験の面接を受けたんですよ。年齢は少し違うくらいで、みんな子どもを育てているお母さんなのですが、結果としては、1人しか面接に合格しなかったんです。合格したのは、3人のなかで最年少の、時短勤務中の女性でした。
落ち込んでいるのは、合格できなかった1人。はっきりとは言わないまでも、腑に落ちないようです。自分はフルタイムで働きながら子育てしているのに、時短勤務の年下の子が合格しちゃったから。公表されている合否の基準はなくて、落ちた理由も明確にはわからないんですよ。モヤモヤしてしまうのも、理解できますよね。
これは憶測ですけど、会社全体としても“時短勤務でありながら”や“不妊治療をしつつ”がんばっている、という人を引き上げている気がしてならないんですよね。
表向きのイメージ醸成というか、ロールモデルづくりというか。
上層部が見ているのは、女性社員一人ひとりではなく数値?
行内では、「結局女性は下駄を履かせて引き上げてもらっている実情がある」という話も聞きます。すべての女性がそうではないけれど、今、上がってきている女性たちというのはやっぱり数値目標があるからだと。
そのぶん、上がっていった後に本人たちが苦労するから、そこに対するケアをするというスタイルをとっている、それが今の現状。
上の立場の男性役員たちに、当事者意識がなさそうなのも気になります。「働きながら子育てしてる女性って偉いよね」「そういう人たちが評価されなきゃいけないよね」なんて言っているけれど、本質を捉えられてない気がします。
誰かが何かを我慢していることとか、周囲がサポートしていることとか、さまざまなネガティブ要素があることまでは、彼らの耳には届かない。もしも届いたとしても他人事のよう。若い人たちでよしなにやってちょうだい、みたいな。
女性である私たちのキャリア形成が、行政や国の施策とか会社の経営方針とかのツールみたいになってしまっているような気がしてならないんです。
働くうえで大切なことは、自ら学び続ける姿勢
一方で現場には、こちらの地方ならではなのかもしれませんが、取引先によっては、女性を担当者に付けることにいい顔をしない男性社長たちもまだまだいます。「女性が担当する=我々が軽んじられている」と思ってしまう世代の人たち。
小さなミスでもすると「これだから女性は」と言われたりします。それがもう怖くて……、法人営業の仕事はプレッシャーがすごかったですね。
私はこういう状況だからこそ自分自身で学ぶことが必要だと思い、ビジネススクールにも通いはじめました。
やっぱり働くうえでは、学び続けることは大切だと思うんです。男性と女性で与えられる仕事に差があったり、女性の取り組む範囲が狭かったりするなら、なおのこと。自ら勉強しないと幅が広がらない。
私自身、学ぶことで確実に自信がついてきていると感じます。
女性の前にはまだあちこちに難題が立ちはだかっているけれど、私は自分の立場にしっかりと責任感を持って、少しずつ身近なところから変えていきたいと思っています。
イラストレーション:高橋由季