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結婚して夫の家業を手伝いながら、家事育児。……私の人生、これでいいのかな。こんなとき、どうする? 《キャリア形成編-10》

リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。

同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。

夫の家業である農業に従事し、今では共同経営者として駆け回るミキさんですが、数年前は「なんのために生きているのかな」「どうしてこんなところにいるんだろう」と、深く思い悩み、体調も悪化。ただ、それがきっかけで夫ととことん話し合うことができ、また、人生の大先輩でもあるメンターに出会い多くの言葉をもらって、前向きさを取り戻したといいます。


育児家事に励むなか、体調をくずし、深く思い悩む日々


短大卒業後は幼稚園教諭として働いていたのですが、結婚を機に農業従事者となりました
義実家に同居して、農業を手伝いながら家事育児に奮闘する毎日
夫が脇目も振らず農業に勤しむ一方で、私は体調をくずし、しばらく寝込んでしまったことがあったんです。

そのときに思ったのが、「嫁ぐ前までは、自分のやりたいことをやったり、夢に向かって走ることができていた。でも、今の自分は何がしたいんだろう?」ということ。

小さな不満の積み重ねや、マタニティブルーもあったと思います。
寝込みながらも、深く人生観を見つめ直す時間。農家に嫁いだらそういうものだと流されて、目の前にあることをただ淡々とこなしてきたけれど、これでいいのだろうかと考えるようになりました。
30代の頃のことです。


夫ととことん話し合い、思いを共有。共同経営という道へ


このまま流されていては、いい方向へは進まない。自分自身の現状や未来と向き合わなくてはならないと思い、夫とじっくり話し合う時間を作りました。
振り返ってみれば、恋愛中も含めて、実はそんなに自分の思っていることをぶちまけたことはなかったんですよね。
これからどうしていきたいかとか、過去にあったこととかも、私だけでなく夫の方も話して。時間をかけて、全部共有しました。

そうすると、農業という仕事にも自然と目を向けることができるようになったんです。天候や経営の難しさに直面したら、どう対応しようか。そして、この地域の農業を守っていくにはどうしたらいいか。課題や目標をしっかりとあぶり出すことができました。

それらに向き合うためには、法人化して、体制もしっかり整えることが必要だという答えが出ました。それで、私も経営者として参画しようということになったんです。

やるべきことが見えて来たら、前を向く以外にありません。
自分で体調を見つつ、夫からは心配されつつも、女性農業者のリーダー塾に通うことにしました。
そして、帰ったら必ず夫と内容を共有。「今回はこういうことを学んで、私はこういうふうに思ったよ、これをどうやってうちの農園に活かそうか?」。
夫の方は、新しいことを受け入れるのは難しい部分もあったようですが、それなりに気づきがあったようですし、何より経営を担う2人が知識や情報を共有することは大事だと思ったので、この時間も欠かさないようにしました。


立派でなくていい。自分自身の存在意義を捉えると、前向きになれる!


リーダー塾で得たものも大きかったですが、メンターからの言葉にも、かなり助けられました。80歳を超える、同じ農業従事者のおばあちゃん。本当に素敵な方なんです。

彼女からの言葉で、私がモットーにもしているのが、「自分自身の存在意義を捉える」ということ。
「決して立派なことでなくてもいい。野菜を売っていて、買う人がいるなら、それだけで世の中の役に立っている。あなたの存在意義があるのよ」。そういってもらえたとき、一気に前を向けた気がしたんです。「おいしいね」はもちろん、「安かったね」と言ってもらえた、それだけでいい。
「何のために」とか「どうして」とか考えすぎてしまう人は、特に自分の存在意義を捉えることが大切なんですって。

自分の内面や過去の出来事に問いかけてばかりいた私ですが、今では、私には存在意義があるんだと自信を持って、自らの意思で道を選び取ることができるようになりました。

現在は夫とふたり、どうしたら次の世代の人たちが安心して楽しく農業に取り組めるのか、探りながら事業を進めています。年齢も重ねてきて、盛り上がるのは「こういうふうに死ねたらいいよね」なんて話題ですけれど(笑)。
でも、今がよければいいという意識ではなく、10年後、20年後のことを見据えて互いの希望を語らえるというのは、いろいろな苦難を乗り越えて来た結果。いいことだなと、素直に思います。



イラストレーション:高橋由季












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