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理念に共感してくれる人を雇いたいけれど、自分本位な志望動機ばかり。こんなとき、どうする? 《部下の育成編-9》

リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。

同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。

夫と農園を共同経営しているミキさんは、いずれ後継者となってくれるような人に来てほしいと人材を募集中。でも、面接をしてみると、ベクトルの違う主義主張を聞かされるばかりで、消沈してしまうそう。農園という大自然のなかでも小さな企業として経営していくためには、働く者同士のコミュニケーションは必須だけれど、それもうまくいかなくて……。


「自然を感じたい」という理由だけでは、農業は務まらない


夫と2人で農園を経営するようになって数年。人材採用や人材育成についても、自分のできる範囲で講習に出たり、いろいろなところで話を聞いたり、勉強をしてきました。
それで私が感じたのは、農業ってやっぱり特殊なのかなというところ

例えば、採用面接の際に、「どうして農業に携わりたいと思ったのか」や「うちの農園に応募しようと思った理由」を聞くと、必ずと言っていいほど「自然を感じられるから」って答えが返ってくるんです。
自身が求めているものをうちに求めている。自分がここで働くことで自分にとってどんなメリットがあるか、を伝えてくるんですよね。

そりゃ自然は感じられますけど、こちらも利益を求めて栽培をしているので、基本的には一般企業と変わらない意識で仕事をしているんです。だから、採用面接の際は、我が社に貢献してもらえる度合いを知りたいんですけどね……。


コミュニケーションを取ろうと思っても、ピシャリと壁を作られる


とはいっても、どこかで妥協しなきゃいけないと思い、採用しました。でも、いいものを作って利益を出したいといううちの理念と、自分がどれだけ癒されるかを考えながら働いている人たち……このミスマッチで、どうしてもいろいろな作業に支障が出てくるんです。

私自身も、労務管理や人材教育の経験がまずもって無いので試行錯誤することが多く、その部分は申し訳ないとは思います。ただ、何にせよコミュニケーションはとらなきゃ始まらないですよね。でも、従業員の方の反応は「私は自然に癒されたくて来ているので、コミュニケーションは不要です」。

「仕事どう?」とか「やりづらい部分ない?」などと声をかけても、「いや、そういうのいいんで」という感じで逃げられてしまったり。
こちらとしては、軽い声掛けからの流れで「うちの企業としては、こういうふうにやっていきたいんだよね」と話したいんだけれど、それ以前に壁を作られてしまう。だから微妙なニュアンスも汲み取れないし、汲み取ってもらえない。もどかしさがすごくありましたね。

視覚的に訴えようと企業理念やマインドを事務所内に貼っておいたりはしたけれど、その裏側にある思いを直接伝えることはできませんでした


働く日数は短くとも、明確な目的がある人の方が仕事への意識が高い


同時に日雇いの方にも来てもらっていたのですが、その従業員の方とは意識が全然違うんですね。日雇いの方には明確な目的がある。とにかくお金が必要という人もいれば、休日にじっとしていられないから労力を貢献したいという人も。そのためか、仕事もテキパキとそつなくこなしてくれて、すごく助かっています。

結局、効率も考えると、ひとまずは日雇い契約中心で進めた方がよいだろうと判断しました。従業員の方には、いずれ正社員になって長く働いてもらいたいと考えていたので本当に悩みましたが、仕事における最終到達地点は“貢献”だと思っている私たちとしては、やっぱり自分優先のマインドの方には厳しいだろうということで、出した答えです。

誰でも働くことによって、自分への癒しだとか、メンタル的な到達もあるとは思うのですが、それは副産物。「農園での仕事なら私を満たしてくれる、満たされたい」という考えだけでは、長くは続けられないと思うんです。

意識を共有できるような人に来てもらえるにはどうしていくべきか。こちらとしても、採用における企業努力が足りていないという部分もあるし、目の前の業務で手一杯な部分もありますが、模索していきたいと思います。



イラストレーション:高橋由季












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