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未経験分野で飛び級昇格! しかも着任早々“ゼロイチ”を求められた…… こんなとき、どうする? 《リーダーの在り方編-15》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
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社会貢献推進部の立ち上げ時に室長に抜擢され、管理職デビューを果たしたサチコさん。未経験分野でのゼロイチの挑戦に加え、試練の連続。そして、ようやく軌道に乗り始めた矢先に告げられたのは、100人規模のCS(カスタマーサクセス)部への異動。がむしゃらに責任を果たすなかで、彼女が気づいたリーダー像の正解は? その答えに迫ります。
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突然の呼び出しで告げられたのは、三段階上への「昇格」!
3月、社長室からの呼び出しがあり、異動の話だと思って向かったところ、告げられたのは「昇格」という予想外の展開でした。新設される「社会貢献推進部」を立ち上げる役目で、これまでまったく触れたことのない未知の分野でした。
しかも、この「室長」という役職は、それまでより三段階も上。初めての管理職にしては急すぎる展開です。「適任だから」と伝えられましたが、なぜ私? 今思えば、前部署でのマーケティングやPR業務で培った「ゼロから企画を立てて遂行する力」が評価されたのかもしれません。それでも、その場では驚きと戸惑いしかありませんでした。
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そしてすぐに大きな試練が。着任早々「2週間後に新部署の方針を作り、社長にプレゼンしてください」というお達しが下されました。いきなり方針を作れと言われても……。それまでの仕事は、指示を受けて業務をこなすものばかり。どこから手をつければいいのか、まったく分かりませんでした。
方針作りを命じられ奮闘した2週間。そこで養われた「ゼロイチ力」とは?
「初めての管理職だから、きっと上司からのサポートがあるはず」とどこかで期待していましたが、そんなものは皆無。全部ひとりで乗り越えないといけない状況でした。
しかし、迷っている余裕はありません。まずは本を読み漁り、その数は1週間で20冊。ネットで関連ワードを調べながら、少しでも理解を深めようとしました。初めて持つ部下2人との仕事も手探り状態。何をどう振り分ければいいのか迷いながらも、なんとかチームで仕事を進めていきました。
このがむしゃらな毎日から得られたものは、とても大きかったと思います。
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まずは「ゼロイチ」を作る基本を掴むことができました。大切なのは「会社から何を求められているのか」を明確にすること。そして、それに沿って「何をすべきか」をタスク化することです。社会貢献推進というテーマに加え、会社のプレゼンスを上げることも重要です。それを踏まえたうえで「うちの会社がやるべきことは何か?」と問い続けながら、自分なりの軸を作っていきました。
「理論武装」も、重要なポイントでした。未経験の分野では信頼を得るのが難しいもの。提案に説得力を持たせるためには「なぜこれをするのか?」という論拠をしっかり集める必要があります。そういう意味で、真っ先に始めたリサーチという作業は、自分に足りない部分を補ってくれる重要な手段だと学びました。
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「どうして私を外す?」。納得のいかない異動先で見つけたリーダー像
部署が軌道に乗り始めた頃、またしても社長からの呼び出し。今度はCS部への異動でした。
「なんで私を外すの?」。周囲から評価もされているなかでの異動に正直ムカつきましたが、一度決まった人事は覆りません。
しかし、CS部での仕事が始まると、これまで見えなかった景色が広がりました。
CS部は100人規模の大所帯。少数精鋭の社会貢献推進部とはまったく異なる環境です。非効率な作業フローや膨大なタスク……それらを整理し、チームを動かす仕組みを作るのが私の役目でした。
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ここで役立ったのが、前部署で培った「ゼロイチ力」。課題を見つけ、分析し、解決策を形にする。そのプロセスは同じ。そして、それがCS部というスケールの違う現場では新たな気づきがあったのです。
その一つが、「リーダーがすべてを抱え込まない」という視点。以前の私は「トップがしっかりしなければ」と責任感に駆られ、必死に動いていました。しかし、どこかで「自分だからやれている」という思いがあったのも事実。それでは規模が大きくなるほど限界があり、組織の成長を妨げるのです。
本当に大切なのはまったく逆。「リーダーが不在でも、チーム全体が自走する仕組み作り」。CS部のような大規模な組織で管理職に就いたからこそ、さらに俯瞰できるようになれたのだと思います。
現在、このCS部を経て、新たな部門でリーダーを務めています。また新しい視点や学びが待っているのかもしれません。これまでの経験で得たことを糧に、これからもリーダーとしてさらなる成長を目指していきたいと思います。
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イラストレーション:高橋由季