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仕事内容もキツいうえに仲間にも恵まれない部署への異動、何をモチベーションにすればいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室472】


✳️今週のお悩み✳️
配属先に恵まれなかった場合、どう乗り越えていけばよいでしょうか。

エンタメ系の商品を開発する会社でデザイナーをしている4年目社会人です。私の会社はプロジェクトが終わると次のプロジェクトにアサインされます。 先月、大きなプロジェクトが終わり、次の配属先が決まりました。今までいたチームはみなさん優しい人ばかりで頼れる上司のもと、楽しく仕事ができていました。しかし新しい配属先は人が極端に少なく、上司は皆いなくなり、若手だけで回してほしいという課題を任されました。仕事内容もキツい部署です。自分はやりたい部署があったのですがそれは無視され、希望ではない部署に回されました。正直興味も知識も1ミリもないうえに知り合いがいない部署で若手ばかりで頼れる人がおらず、既に会社に行くのがしんどくなっています。同期は希望通りで花形の部署や優しい上司の部署に配属され、この差に失望しています。仕事内容もキツいうえに仕事仲間にも恵まれず、やる気が完全に削がれた今なにをモチベーションにすればいいかわかりません。このプロジェクトは約2年と言われていますが、こんな興味のないキツい部署で2年もがんばれるのだろうかという不安しかありません。

華々しい部署に行った同期がうらやましくて昼ごはん一緒にいるのも嫉妬で苦しくなります。隣の芝生が青すぎます。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉がありますが、いずれ割り切ることができるのでしょうか? こういう環境がガラリと変わったときや望んだ環境でなかった場合、どんな感じで乗り切って行けばいいか、気持ちの持ちようやアドバイスをお聞きしたいです。
(すずめ・25歳・会社員・大阪府)



まずはやはり、社員の立場も経験しているし、今はマネジメントする側の立場でもある、こばなみの意見から聞きたいな。


私もやりたくない仕事とかありましたけど、そのときのモチベーションの上げ方は、それができたら何か見えるかもしれないとか、何かそこのなかのおもしろさややりがいを探すことができたら次につながるかもしれない、みたいなことを思っていて。

こんなキツいところでやれたらもっと成長するだろうって思ってやっていたら本当にそうだったから、私はすずめさんを励ましたいし、その部署でがんばってほしいなと思いました。

それと、花形部署に行ったからって、同じようにつらいこともあるし、とは思いますけどね。楽しいだけの仕事なんてないわけだから、何かそこはたぶんまだ25歳4年目ということもあって見えてないんだと思うんですよね。

すずめさん、商品のデザイナーさんですよね?

これから10年とか20年とか働いていくうえで、どっかで絶対何かキツいことがないと、一段上にあがれないんじゃないですかね。だったら私は早いうちにやっといた方がラクというか、いいんじゃないかなとは、トータル的に見るとやっぱりそう思ってしまいますけど。歳とってからの試練とかって、もっとキツいと思うので。


すずめさんのケースでちょっと変わってるところがあるとすれば、若手だけで回している部署だってことだよね。
もちろんだからこそ大変だし不安なわけだけど、ちょっと希望的な見方をすれば、すずめさんたちなら自分たちだけでできるでしょ?って思われてる、ってことでもあるよね。


期待はされてる可能性ありますよね!

配属する側からすると、できそうもない人を配属しないですよね。ポシャったら困るし。確かに一見キツいけど、ジャンプアップ配属かもしれないですよね。


まぁ僕らはその社内の実際のニュアンスとかはわからないからなんとも言えないところもあるけど、客観的に話を聞くぶんには、そういう「あいつなら任せられると期待されている、からこそ」的な人事である余地はぜんぜん感じますよね。

あと、これもこばなみが言う通り、すずめさんはいま25歳で、今後も続くであろうキャリアのなかでは、たぶんまだ初期も初期、ではあるんですよね。
そんななかで、今はただキツく感じるだけかもしれないけど、誰かに頼ったりできない状況に放り込まれてとにかく自力でなんとかするしかない、みたいな段階を経ておくことは、ひょっとしたらだけど、これから先もっと職場内でステップアップして、それこそプロジェクトのトップに立ってもろもろをマネジメントしてくような立場になってゆくにあたって、意外と必要だったり大きなプラスだったりする経験なのかもよ?というような面は、間違いなくある気がしますけどね。

とは言え大きい会社だとやっぱり、花形部署とか出世コースとかがガチガチにあって、そこから外れちゃうとなかなか挽回は難しい、みたいな構造がいまだに残ってるってことなのかな……。


これ、エンタメ系商品を開発する会社のデザイナーということだから、売れてる商品とか会社が力を入れている商品が花形だったりするのかもしれないですよね。


僕自身はまさに、そういう不本意な仕事をし続けるハメにならないためにこそ、わざわざ不安定なフリーの人生を選んだわけだけど……。

ただ、すずめさんは、デザイナーという一応クリエイティブ性が求められもする仕事をしているわけだから、たとえどんなところに押しやられようと、ちょっと失礼な言い方だけど、「こんな部署でさえ」私たちがおもしろくしてやる!みたいな気概はあっていいんじゃないかな、とはちょっと思うあたりですけどね。

これは会社員というよりどちらかと言うとクリエイター的な立場からの一般論だけども、もともと調子いい領域でよろしくやるなんてのは当たり前すぎだし、後からただ乗りしてるだけで、そんなのは本当におもしろいとかカッコいいとか言わないよ、みたいな矜持というのも、どこかにあっていいと思うんですよね、曲がりなりにも「創る」ことを志す人なのであれば。

それよりも、現時点ではあまりそうは思われていないところから、いかにおもしろさやカッコよさを見い出し、引き出すか、みたいな方向にこそ腕の見せどころがあると、少なくとも僕は考えてずっといろんなことをやってきたつもりではある。

もちろん世の中には、こんなところでがんばっても意味ないだろ!という職場も間違いなく腐るほどある……どころかそっちのが残念ながら少数派ではないのが現実でしょうから、万人にそういう意欲を持てという話ではまったくない、ということは、改めて強調しておきたいところですが。
むしろ全力で手抜きしてやり過ごして、なんなら今すぐとりあえずは逃げちゃってください!というような場合も、言うまでもなくたくさん考えられる。
すずめさんのこれも、ひょっとしたらそっちに考えるべき例である可能性も、まぁもちろんあるわけですけど。

ただまぁ、デザイナーというのを一応クリエイティブ寄りな職と考えるならば、やっぱり、つまんねーなーと思いながらルーティン的に作業をこなそうとするだけの人と、なんであれ価値を見い出し「おもしろがって」やってくれる人、どちらが重宝されてゆくか? あるいはこっちのが大事かもだけど本人的に楽しいか?と言えば、そりゃあまぁ……。


一緒に働きたいのは、やっぱりおもしろがってやってる人だなぁ。自分もそうありたい!


たとえばだけど、今回配属された部署に現状すずめさんのモチベーションが上がらないとして、それはなぜなのか? どこがどうイケてなくて、どうにかしようはあるのか?みたいなことって、ちょっと考えどころではあるわけじゃない?


そこを攻略したデザインで大ヒットが生まれるかもしれないですよね!


一番上手く行けばそういうことだってあるかもしれないし。
僕自身、わりとそういう発想のほうが得意というか楽しく感じるほうだから、というのもあるかもだけど、とにかくひとつの考え方としてそういうのもある、ということは頭の隅に置いといてもいいんじゃないかと。

それか、もうちょい後ろ向きというか冷めたスタンスになるけども、つっても2年でしょ?って言い方もできるわけですよ。
この2年をなんとかしっかり乗りきれば、それだけでもう経験値は確実に大幅アップして、そこから先はラクになる!……みたいな見込みが実際あるなら、今この瞬間の踏ん張り甲斐も、ちょっとは出てきませんかね。


これがデザイナーじゃなくていきなり経理2年とかだったら、それは考えちゃうかもしれないけど。


たしかに、とくに大きい会社だと、希望とぜんぜん違うとこに回されたり、あるはあるもんね。
ただそれも、上の人がちゃんといろいろ考えたうえでやってるなら悪くないパターンもあって……たとえば、一度は営業の現場も経験しといたほうが、のちのち制作部署を引っ張ってくうえでも視野が広くなっていいから、2年だけやってみろ、みたいなことって、一応あったりはするわけでしょ。
ま、そうかと思いきや結局ずっとそっちの畑のままじゃん、みたいなのもあるからなー……一概には言えませんけど。

これさ、そういう人事を決定した上司に、なんで私をここに置いたんですか?って、直接聞いてみるのがいいんじゃない?


それいいですね。


私をここに置いて、どういう働きを期待してるんですか? 出した希望とは違うんですけど?って。
上司は答える義務があると思うし、聞く権利もあると思います。

てか、そんなのはその立場の人が最初から説明するべきことなんだと思うけどね、本当は。
君にはとくに期待してるからこそあえてこうしてるんだよ……みたいな、そういう「アゲ」こそ、上の者の仕事だろ!って。

だから、すずめさんのモチベーションが現状ダダ下がりしてしまってるのも、ひとつには配属した側の怠惰もあると思いますよ。

それこそさ、すずめさんと同期たちに個別でこっそり、「ここだけの話だけど、君のリーダーシップや将来性を一番買ってるからこそあえてここを一任してるんだよ、ほかのやつらには正直任せられないから……絶対人に言うなよ?」「いやもうお前がやっぱエースだから! 当然王道コースで大活躍してもらいますよ……絶対人に言うなよ?」とかって(笑)、それぞれに正反対のことを言ってでも、全員をしっかりアゲろよ!って話じゃん。
その責任がすべての上役にはありますよ。


上司もがんばってほしいですね。
ただ「やってね」と言うだけでなく、モチベーションを上げるところも仕事ですからね。

私も……、勉強になります!


すずめさんも、要求していいと思いますよ、「なんかもっとやる気の出ることちゃんと言え!」って。

まぁとにかく、何事もそうですけど、腐っちゃったらそこで終わり、ということにはやはりなりやすいので……。

すずめさんが行かされたところは、上司もいなくてってことだから、わりと新しめの、お試しプロジェクト、みたいな感じなのかな?


停滞していて、新しい風を入れたいとかかもしれないし。


なんにせよ上はいないわけだから、今こばなみが言ったように、風通しだけはいい状態ではあるんですよね、たぶん。

逆にさ、一番最悪なのは、長年にわたってすでにガチガチに固まっちゃった不合理なやり方を、無能なくせに頑固な古参たちが惰性で守ってるような部署にひとりで後から入ってかなきゃならない、みたいなケースじゃない?(笑)
今さらなんも動かしようがない、みたいな。

そういうのにくらべれば、すずめさんが今いるとこは比較的、言わば「更地」なわけでしょ、たぶん。
だとしたら、そりゃあ「この痩せた荒地を、この人手だけで耕せってか?」的な大変さはあるだろうけども、自分らがやったぶんは全部自分らの手柄にもなるわけだから、なんというか、やり甲斐があるっちゃある場所、という見方もできないですかね?

それに、世の中には、会社全体どこを見ても希望など持ちようがない、というようなところも、残念ながらたくさんあるわけですから……。


本当にそうですよね。それでも辞められない、っていうこともありますし。


そこへ行くと、エンタメ系の商品デザイナーって、そもそもワクワクの余地が本質的に詰まってるお仕事のように、僕ら部外者からは見える感じはありますよね。

もちろん、そんな気楽なもんじゃねぇ!ってことかもしれないけどさ(笑)。
でも、少なくとも人に楽しみを与える仕事なのは間違いないわけだから、そもそも働いている側が作っているものに楽しさを見い出してナンボでしょ、ということは言えると思うんですよ。


編集長クラスの大先輩が、プロとしては何がテーマでもいいところやおもしろいところを見つけるのが編集者の仕事だと話していて、確かになって思い、今でも本当にそう思いながら仕事をしています。デザインも似てるかなって。


なんであれ常に限られた条件のなかで、どう100点以上出すか?っていうのがクリエイティブであり、仕事なんだよね。
だから、ハナから興味ないとか言ってる場合じゃないんだよね、ホントは。


若さのせいにしちゃいけないかもしれないですけど、なんか自分のやりたいものを表現するのが編集だみたいなことを期待している人もいますよね。実際に若いとき私もそういうところがあったと思うけど、そうじゃなくて私たちの職業はどう素材を美味しい料理するかってこと、それが編集なので。


それはほかの、実はほぼすべての仕事にも完全に当てはまることだと、僕も思います。

あとさ、「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざがあるくらいで、要はデカくてイケてるとこのケツっぺたにくっついておこぼれをちょうだいして回るより、弱小でも誇り高く独立独歩、いずれ一矢報いてやる、くらいの気構えでいるほうが、人生としていいじゃん!というふうに考えるのもいいんじゃないですかね。


それすごいわかる!
私も小さい会社だからこんなにやる気が持続しているというのはあるかもしれない。逆転願望みたいのがあって、だから燃える!とかありますもん。


ということで、すずめさんの今の立場は、むしろチャンス!……という発想の転換、してみてはいかがでしょうか。


心から応援しています!!


あと、僕も若手スタッフとか、もっとちゃんとアゲてゆかないと!と思いましたよ。


上司側もしまっていきましょー!



【今週のお絵描き】

画・宇多丸


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:55の生放送)をはじめ、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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