会社は女性管理職を増やしたいというけれど、キャリアアップを望んでいない人も多い。こんなとき、どうする? 《キャリア形成編-9》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
会社は女性活躍を推し進めているけれど、現場は現状に満足しているスタッフばかり。数少ない女性マネージャーとして働くアケミさんは、若いスタッフに仕事の面白さを伝えたいけれど、待遇やブランド力が強いばかりにキャリアアップに目を向けてくれる人はほんのわずか。その状況に悶々としつつも、自身がロールモデルとなって一つの可能性を示していきたいと言います。
部下の女性に「マネージャーはどう?」と聞いてみても、モゴモゴするだけ……
会社としては、女性管理職を増やしたいと声高に言っています。だからと言って、女性陣に「意識を変えて欲しい」と圧をかけているわけでもない。「そういう組織を目指しています」という、ビジョンだけは提示されています。
そんななかで、私は今マネージャーとして働いていますが、キャリア面談や1on1の際には「選択肢としてマネージャーはどう?」と聞くようにしています。すると、「どうやったらなれるか分からないし……」などと言ってモゴモゴ口籠るんですよね。
イメージが湧かないそうなんです。やる気はあるけれどイメージができないだけなら、直接私に聞けばいいんだけど、聞かれない。この辺になにか深い分断があるのかもしれません。
魅力的に感じないと思われているんでしょうか……仕事内容も、私自身も(笑)。
男女問わず、現状に満足している人も多い。キャリアアップに向き合うきっかけもない??
うちの会社では、セールススタッフでもそれなりに待遇はいいですし、ブランドの看板もあるので、それ以上は求めていないと言われても、違和感はありません。すでに満たされているんですよね。
わざわざマネージャーだとかポジションを取るということにどんな価値があるのか、想像しにくいというのは、わかる気もします。
でもそれは、女性に限らないんですよ。
男性でも、自己成長とは何か、自分は何をしたいのか、という部分の解像度が低いままだと、キャリアも見えてこない。
だから、いつもチームメンバーには「自分としてはどうしたいのか?」と問うんですけど……基本的にクリアな答えは返ってこないことが多いです。
とりたてて自分を深く知ろうとしなくても、すでに一定の生活レベルが満たされているから、キャリアアップに向き合うきっかけも見つからないのかな、と感じます。
これは、大きい企業ならではなのかもしれません。
このまま多くの社員が、今のポジションを守るモチベーションでしか働かないとなると、企業としてはどんどん弱くなりますよね。でも、これをどう変えていくかというのは、本当に難しい。
大事にしたいものが、現場だとかコミュニケーションだとか、わかっている人はもうそれでいいけれど、問題はブランドだけで会社にいる人。
かくいう私もかつてはその一員だったと思いますし、それに気がついて自分で自分にモヤモヤしたから、上に上がろうと行動したんですよね。
私がひとつのモデルケースとなり、若い世代の選択肢を増やしたい
私自身、セールススタッフを続けていてもトップセールスにはなれなかったけれど、マネージャーになって、メンバーが自分とは全然違うやり方でがんばっていること自体、勉強になるし、何より面白いと感じています。
それぞれのやり方をチームで共有して成果に繋げていくことにもやりがいがあると思っています。
私と同じように、セールスとしてのプレイングよりも、こういったヒューマンマネジメントのような仕事が得意だとか好きだとか面白いと思う人も、きっといるはず。
だからこそ、私自身がロールモデルとなって、ほかのスタッフに可能性や選択肢を示していけたら、と願っています。
個人的には、自分で決められることが多い、という意味で一セールスであるよりも圧倒的に自由度が高いから、絶対お得だと思っているんですよ。これは本当に何の忖度もない発言です(笑)。
ブランド力も生活レベルも決して失うわけではないですし、前向きに考えてみてほしいですね。
イラストレーション:高橋由季