自分とスピード感が違う部下にやきもき。こんなとき、どうする? 《部下の育成編-4》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
リーダーとして働く女性が実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、小規模保育園でクラス担任として働くマルさんの、部下への仕事の振り方について。育成のためにこまごまと仕事をお願いしているけれど、自分一人でやった方が全然早い……というジレンマに悩んだそう。マイペースぶりにやきもきしながらも見つけた、お互いのためになる道筋とは?
保育士の仕事は時間が細切れになるからこそ、もっとサクサク動いて欲しい!
小規模保育園でクラス担任を務めるようになり、4年が経ちました。アシスタントと一緒に業務にあたっているのですが、その1人がどうにもマイペースなんですよね。ものを出したら出しっ放しだし、細かい期日もなかなか守ってくれない。
例えば書類作成を「今すぐにやって欲しい」と伝えても、ちっとも進まなくて、結局は保育の時間を抜けてやっていたりするんです。
でも、決してサボっているわけではなくて、書類1枚でも全体をくまなく確認することから始めて、ひとつひとつの項目にじっくり対応するから、時間がかかるんですよ。15分で終わる仕事を2時間ぐらいかけてやっているような感じです。
私がパパッと終わらせるのが得意な方なので、余計に気になってしまうのかもしれませんが、彼女も20代とはいえ保育士歴3年目なので、もうちょっと動いて欲しいですね。
園長に相談すると、集中してできる時間が取れていないのではないかと言われました。規定時間外に子どもが登園したり親のお迎えがあったり、子ども同士のトラブルを見つけたりすると、そちらに手一杯になってしまって余裕がなくなると。それは理解できるのですが、いずれも保育士の仕事としては日常茶飯事。
それに、お昼寝中の静かな時間など、集中して作業をする時間も取れているはずなんですよね。
フォローしてあげればいいという上司の意向にモヤモヤ……
子どもたちに対してはすごく真摯に向き合っている彼女だからこそ、もったいないなと思います。個人的には、一通りのことをすべて一人でできるようになって欲しいんです。
園側は「周りがフォローしてあげればいい」というスタンスだから、なかなか協力を得るのも難しい。厳しく指導することによって辞められてしまうような事態は避けたいという実情もあるのでしょう。
でも、私としては、現代の日本の保育士不足の状況を鑑みても、きちんと育ててあげた方が本人のためにも業界全体のためにもいいと思います。
不安はあるけれど思い切って任せて、成長を見守りたい
あれこれ細かくお願いしていると、こちらが想定しているよりも大幅に時間を取られてしまうことが多いので、ローテーションを組み、はっきりと業務を割り振るようにしました。時間がかかってもいいから、彼女に完全に任せる日を作ったんです。
そばで見ているとやきもきしてしまうこともありますが、叱咤はせず激励だけにして、余計なことも言わないように、気をつけています。
また、季節の恒例イベントなどの業務は、毎年繰り返すことで経験値を重ねられるので、アシスタントたちに主導してもらうようにしました。私は一通りの経験があるからこそ新規提案に注力し、園を盛り上げていきたいと考えています。
昨年はこれまでの人脈なども活かして特別イベントを立ち上げました。子どもたちだけでなく保護者からも好評を得て大成功。ふだんとは違うお楽しみがあると、子どもはやっぱり喜んでくれるんですよね。私自身もすごく達成感を得て、自信につながりました。
保育園はまだまだ女社会で、上下関係が大変そうとよく言われますが、私の周りは上か下かを気にしている人は少なく、フラットな雰囲気です。私自身も幅広い年齢層がいる中でスポーツをやっていたから、ほとんど気にしていません。だからこそ、ベテランも若手もお互いに成長を目指せる職場にしていきたいですね。
イラストレーション:高橋由季