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女性だから? 私も経営者なのに、挨拶もしない営業マン。こんなとき、どうする? 《ジェンダーギャップ編-8》

リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。

同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。

広大な農園で取締役を担うミキさん。夫が代表ではあれど、自身も経営に携わっています。それなのに、訪れてくる営業マンは挨拶もしてこない。話を聞こうとしても「奥様なら結構です」……。モヤモヤするけれど、この業界ではこれが普通?? 背景を見つめ直し自分の考えを整理して、ミキさんがたどり着いた対応策、そして農業界でも耳にするという“女性活躍”への思いとは。


私が女性だから? 夫としか話そうとしない、挨拶すらしない人も


うちの農園は、私と夫が共同で経営しているのですが、「女性にはわからないだろう」と思われているような状況に直面することが多々あります。

たとえば、農園の管理事務所には、トラクターを扱っている営業マンとかが頻繁に訪ねてきます。なかには礼儀正しい人もいますが、私が夫と一緒にいても一瞥するだけの人、しょっちゅう来ていて絶対に顔も覚えているはずなのに挨拶は絶対にしない人、近くを通っても空気のように知らんぷりする人も。

女性だからなのか、関係者ではないだろうという思い込みなのか、それぞれの理由はわかりませんが、気分のいいものではありませんよね。


そもそも、挨拶をするのは当たり前では。営業マンとしては逆効果!


私が思うのは、性別や関係性などは別として、そもそも人としてどうなんだろうということ。誰かに会ったら挨拶をするのって、学校でも家庭でも教えられるものですよね。

そこで、夫には「うちでも息子たちに挨拶を教えてきたよね。大人になって挨拶もできないような営業マンから、買いたいと思う?」って話をしました。「私は嫌」とはっきり伝えて、なおかつ、「営業マンって、会社の顔でしょ!」なんて生意気なことも言いました(笑)。

それには夫も納得したようで、「うちの場合は妻も経営に携わっている。妻の許可がないと機械も買えないよ」って言ってくれたんです。
営業マンは「そうなんですか〜!」と白々しく、「奥さん!今後もよろしくお願いします」なんて頭を下げてきたりして。あきれてしまいましたけど、ほかの営業先でも意識を変えていってくれているといいなと思います。


挨拶はしたもん勝ち! 相手に期待しないことがポイント


私は挨拶をしない人にも、しっかり顔を向けて、笑顔で挨拶するようにしています。それでも返さない人は多いですが、自分が気持ち良く思うためにやっています。

読んだ本に、「挨拶はなんのためにするのか」という内容の問いかけがあって、考えてみたんです。
そもそも、挨拶をされないことでなぜ私は怒っているのかを自問自答してみたら、勝手に相手に求めているからだとわかりました。

期待してはいけない。挨拶がコミュニケーションの第一歩だと思うからこそ、自分から欠かすことはないようにしよう。どういう態度を取られようと、挨拶はしたもん勝ちだ!と思うようになったんです。

すると、おのずとイライラを表に出すこともなくなったし、むしろ“ちょっと感じの良い奥さん”にもなれてきたんじゃないかな。対営業マンだけでなく、全般的にコミュニケーション能力が上がったなと感じています。


歴史あるからこその、現状。これからは個々の役割に目を向けて


農業に従事していて、男性優位なジェンダーバイアスは根強いと常々感じますが、すごく長い農業の歴史を考えると、仕方がないことだとも割り切っています
どう考えても農業は力仕事なので、男性に比べて力のない女性は家を守る役割になる。家を守りながら夫と一緒に働いて、家族みんなで農業に従事することで生活を守る。それはもう何百年もの歴史があって、それを踏まえて今の農業があるんですよね。

その流れからすれば、営業マンが今になって急に「ここは奥さんに!」とはならないのは当然です。
私は偉くなりたくて取締役になったわけではなくて、ただ経営者として参画したかっただけ。それも含めて冷静になって、現実的に考えると、営業マンへの対応も「代表がいるときにまた来てください」と私から言うのが正解の場合もある
歴史や背景に目を向けないでいたら、挨拶されないということについても、もっとイライラしていたことでしょう。

昨今、「女性農業者が活躍するためには」みたいな文言を目にしたり、議論のテーマになったりもしていますが、女性が表に出ないことにどんな問題があるのか、自分なりに考えてみたことがあるんです。それは悪いことなのか? それが農業の足かせになっているのか?

答えはNOで、性別にフォーカスする必要性はない、それよりも“できる・できない”にフォーカスするべきなのでは、と思い至りました。
突き詰めて考えれば、営業マンが男性だけを相手にしても、私たちの業務には特に支障はない。それよりも、組織として役割分担ができていないことの方が支障が出るんですよね。それは夫、これは私、あれは〇〇さん、というふうに役割を設けていったときに、誰もできないことがあったとしたら、それが一番の問題です。

挨拶をされないことでこちら側には支障がないのも同じ。
バイアスを解消させることに躍起になって時間と力を費やすよりは、背景を知ったうえで、自分の視点を変えていった方が近道
な気がしています。



イラストレーション:高橋由季











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