自分より職歴が長い人や学歴が高い人のこともマネジメントしないといけないけれど、くじけそう……。こんなとき、どうする? 《リーダーの在り方編-13》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
まったくの未経験から、介護業界に飛び込んだジュリさん。もちろん職場には自分よりもキャリアが上の人が多く、さらには、有資格者、高学歴の人などもいて、みんなのスペックに気後れしてしまうことも。でも、とある仕事がきっかけで「自分は自分!」と前を向けるようになりました。
メンバーよりも知識や経験が少ない私。現実を突きつけられ泣いて帰った日も
今でこそ副室長という立場ですが、実は私もこの介護の業界はわからないことばかりで、日々いろんな人から勉強させてもらってきたというのが正直なところ。
入社したばかりの頃は、パソコンの使い方もよくわからなくて。介護職の専門用語も「これ何ていう意味なの?」と聞いたりしながら、少しずつ成長してきました。
入社数年後にはリーダーの立場になったのですが、取りまとめるメンバーの中には、私よりもずっと高学歴の方、介護業界のキャリアが長いベテランの方、看護師の免許を持ってる方もいて。
そんなすごい方たちからクレームのような連絡をもらったら、私はどうやって対応したらいいんだろうと、当時は毎回ハラハラ。格差を感じて凹んだこともたくさんあり、現場から泣いて帰ったことも何度かありました。
かっこつけない。知ったふりもしない。ありのままでいようと思ったきっかけは、この仕事ならではの出会い
そんなとき、重度障害の方のご自宅に支援に入らせていただいたんです。私は重度訪問介護のお仕事は初めてで、どのような感じかまったく知りませんでした。
いざご挨拶をしたら、私自身が否定されているように感じられる態度を取られ、面食らってしまいました。正直、「介護をしに来てあげたのに、どうしてそんな態度をとられなくちゃいけないの!?」と思ったんです。
でも、その後もいろいろな方の支援に入って、お一人お一人の背景にあるものや、それまでの経緯がわかってくると、「介護に来てあげたのに」「感謝してもらいたい」、そういう気持ちが自然となくなっていきました。
もし立場が逆だったらと思うと、決してそんな気持ちになんかなれないなって。
そんななか、私自身が大きな病気で突然倒れたんです。しかも二度。
そのときにも感じたんですが、人っていつどのタイミングで障害を持つかわからないし、誰しもに可能性がある。また、もしかしたらもともと障害を持って生まれてきていたかもわからない。
介護の現場にいるからこそ、そういう思いがどんどん強くなって、当たり前だけれど、いろいろな人がいることや、自分が自分でいることの意識が、揺るがないものになっていったんです。
仕事の面でも、「私は私。このままでいい、正直にやっていこう」と、気後れしていた気持ちがぐっと前を向けるようになったんです。
些細なことでも分からなければ素直に手をあげ、教えてもらう。それでも解決できないときは上司に相談
自分のなかで、ありのままでいこうと決めたら、気持ちがちょっと楽になって。
どんなに格好つけても、どんなに胸を張っても、知識や経験がないと伝えきれない部分がたくさんあるのが介護の現場。わからないところがあれば、メンバーに「私、そこはまだわからない。どういうふうにしたらいいと思う?」「今まで経験をしてきたなかで、こういう場合はどうやっていたの?」と、素直にうかがうようにしました。
それでもらった答えを取り入れながら、私だけで決めるのではなく、利用者さんのほうにもきちんと共有します。「こういう取り組みもあるんですけれどもいかがでしょうか」と、きちんと段階を踏んで、コミュニケーションをとりながらやっていくようにしました。
今でも、「私も皆さんと同じ人間で失敗もします。間違えることもたくさんあります。でもそのときは、遠慮せず伝えてね、教えてね」と声をかけています。
そのうち、私自身が堂々といられるようになってきて、チームの雰囲気も変わってきました。
自分ができることは相手もできるとは限らない。分かり合うためには、その大前提を忘れちゃいけない
お互いが分かり合わないと、どんなにいいチームであっても助け合うことはなかなかできないと私は思うんです。
学歴や経験などは関係がなく、人には向き不向きがある。毎回同じことを聞いてくる人もいれば、1、2回の説明で業務を進められる人もいます。
いろいろな人がいるなかで、チーム内が割れてくるときも、今まで何回かありました。
「あの人、こんなこともあんなこともできないんですよ」。
そんなことを言われたら、
「でも、よくよく考えてよ皆さん」と。
「あなたは1日2日でできるけれど、私だったら1ヶ月でやっとできる可能性もあるし、そういうのは人それぞれ違うものだよ。自分と同じだと思ったらそこは絶対違うよ」。
チームなんだから、できない人が困っているときは寄り添って助けてあげるようにと伝えています。必ずその人にも自分でできるタイミングが来る、できる楽しさも覚えてくる。そのタイミングが来たら、みんなで背中を押してあげればいいんです。
介護の現場には、いろいろな課題が次々と降ってきます。でも、メンバーとコミュニケーションをとりながら一緒に同じ方向を向いて取り組んでいくその喜びは、かけがえのないものです。
ただ、これは私のひとつの経験でしかありません。チームをまとめるのは、いろんなやり方がありますよね。一度成功したことが決して正解ではなく、たまたまうまくいっていた可能性もある。そこは肝に銘じて、私自身、毎回学ばせていただきながら、チームが気持ちよく働けるやり方を模索しているところです。
イラストレーション:高橋由季