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知人の結婚や妊娠を素直に祝福できない私。29歳で焦っているけれど、結婚できないのはこんな性格のせい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室471】


✳️今週のお悩み✳️
上手く言葉にできませんが、ここ数年モヤモヤし続けていることです。結婚のことです。私はいわゆる29歳の崖に直撃している独身実家暮らし、今まで一度も彼氏がいたことがありません。
2年ほど前、親しいと思っていた知人の突然の結婚報告、妊娠報告以来、結婚しなければと焦り続けここまで来てしまいました。知人は努力家で真面目で夢だった職につき、お相手とも恋愛結婚。長年のお付き合いが実った末の結婚式は、ものすごく羨ましいくらいでした。そして今はお子さんもいらっしゃいます。
報告を受けたときはなんとかお祝いを述べたものの、私はその知人に仕事の愚痴を言ったとき、かなり冷たい扱いを受け、結婚報告も妊娠報告もこちらから近況を聞き出したくらいで、親しいと思っていただけにかなりショックでした。また、生来の根暗な性格が災いしてきっと彼女から見れば軽蔑すべき人間だからそういう扱いをするのだろうとまで思ってしまいました。
距離を置き、自分も幸せになろう、頑張ろうと婚活をしているものの、知人の完璧な人生を思うにつけ、何をやっているのだろうと惨めな気持ちでいっぱいになりまったく進めません。気持ちが落ち込むと、知人に邪険にされたことやその前楽しかったことを思い出し、悲しく、ひどいときは仕事も手につかなくなります。
こういう性格を変え、素直に知人を祝福し、自分も幸せな結婚をしたいのです。実際、知人を素直に祝福したほかの友人はそろって幸せな結婚をしています。私が結婚できないのもこんな性格のせいでしょう。こんな考えをどうしたらやめることができ、前に進めますか。
(りり・29歳・公務員・北海道)



おそらくりりさんも、こういう相談に対して僕らがどう答えるか、だいたいわかってらっしゃるとは思うんですけども……。

改めて結論から申し上げておくならば、まず何より、ご自分のことをことさら貶めるような考え方は、やめましょうよ!
りりさん、なんも悪いことしてないじゃん。

大前提として、とくに他人が外向けにアピールしてくる何かとか、世の中一般の風潮を含めた「外側の基準」なんか、それぞれの個人とは実際には合ってなくて当然なのに、そのギャップに引け目を感じたり、まして自己卑下しちゃったりするのは、マジで不毛でしかないし……。

あとは、これもいつも言ってる大原則ですけども、「◯◯でないと不幸」式の考え方こそが、実態とは関係なく半自動的に人を不幸感に陥れ続けてしまう、まさに最悪の思考法なので、できれば極力しないようにしたほうがいいと、僕らは強く思いますよ。


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同じことをやっていても、その考え方をするだけで本当に不幸に思えてきちゃうし、それを捨てるだけで気が楽になる人、いっぱいいると思うんです。 


しみじみそう思います。


第一、この話で何が一番問題かって、そのご知人が、りりさんに対してあんまりいい態度を取らなかった、ってことじゃないですか。


邪険にされた、とも書いてありますからね。


そのせいで、りりさんも「自分が悪いのかな……」とか思いはじめちゃったわけで。
要はその人、前はどうあれ少なくとも現時点ではもう、りりさんにとってあんまりいい存在じゃない、むしろはっきり有害な人間関係になっちゃってる、ってだけのことでしょう。
単に、いきなり感じ悪くしてきたそいつが悪いってだけ!

そんな相手のこと、りりさんからすれば素直に祝福する気にならなくて、当たり前ですよ。
あっちの言い分がどうであれ、手のひら返しで冷たくされてりりさんが傷ついたことは事実なんだから、「世間的にはどうだか知らないけど、私はロクなもんじゃないと思ってるよ」って感じで、ぜんぜんいいでしょう。
僕ならそれこそ、一方的に内心軽蔑しまくりますよ!(笑)

なのに、りりさんがなぜ自分のせいみたいに考えだしてしまうかと言えば、それはひとえにやっぱり、「結婚~出産してなきゃ不幸」っていう、まさにさっき言ったようなよろしくない思考法に、ずっぼりハマり込んじゃってるからじゃないですか。


悪いほうにつなげちゃって、ループになっちゃってる感じもします。


まず、言うまでもなくですけど、その人含めて、「完璧な人生」を送っている人間など、この世に存在しませんから……「そう思わせるのが得意な人」はいてもね。
結婚しようがしまいが、子どもがいようがいまいが、それぞれに地獄もあれば、歓びもある。
どっちが上とか下とかくらべようとしても、どうしたって一面的・表面的にならざるをえないわけで、実質的にはなんの意味もない話なんですよ、そんなの。

大きく言いきってしまうなら、うまく行かないことや悲しいこと苦しいこと全部含めてその人固有の人生があるというだけで、他人のそれと比較すること自体が、結局無意味なんだと思いますよ、ホントに。

ちなみに一応言っておくと、「結婚~出産してなきゃ不幸」という考え方を、個人的にしているぶんには百歩譲ってその人の勝手なんですけど、それを聞いて嫌な気持ちになる人もたくさんいる、ということはやはり、留意しておいたほうがいいと思います。

あとさ、「親しいと思っていた知人」って言ったって、人も人間関係も、普通にどんどん変わってゆくものですからね。
それこそ結婚出産なんかまさに、ピンポイントで劇的にライフサイクルや考え方が変わりまくるタイミングでしょうから。
逆に言うと、そのモードもまたずっと続くわけじゃないから、ひょっとしたらその知人だって、いずれ「あのときはなんかごめんね」みたいになる可能性も、まぁゼロではないわけですけど。

なんにしても、今は表向き順風満帆に見える人にも、必ずなんかしら起こり続けるのが人生というものだし、もし仮にそういう起伏がまるでない「順調な人生」を送れた人がいたとしても、そんなのは「痛みから学ぶ機会に恵まれないままただ歳だけ取っちゃって、可哀想な人だな」という見方もできる話だし、実際僕は本気でそう考えますけどね。


まぁでも、りりさんの気持ちもわかりますけどね。
私も20代後半、なんか自分だけやばいなって思ったことありましたもん。

仕事をしてるときは周りも同じような感じで楽しかったし夢中だったから気にしなかったけど、同窓会みたいな集まりとか、誰かの結婚式とかに行くと、あぁみなさん順調な人生なんだろうなって友達を見て羨ましいって思ってました。

それにくらべて私は大人っぽくもないし、職業柄毎日のように徹夜みたいな感じで生活にだらしないっていうか、大きな会社に就職したわけでもないから将来の保証もないし……とかとか、なんか恥ずかしくて、昔の友達に会えないなと思ってたこともありました。
自信がなかったんですよね。

でも、だんだん仕事もできるようになって、人とは違うかもだけど楽しいじゃん!いいじゃん好きだし!って思えるようになった30代後半とか、同時に子育てしている友達の悩みとかもいろいろ聞くようになって、なんだ誰しも落ち込んだり頑張ったり必死なんだなって思えたら、いつのまに引け目みたいのがなくなりました。
よく友達とも会うようにもなって、戦ってる場所は違っても共通項とかあるなぁ、なるほどなぁなんて思ったり。

いまりりさんの年代は、ライフステージがぐわんぐわん変わる時期だから余計そう思ってしまうかもしれないけど、人生トータルで考えればいろいろあるけど、そのうち落ち着くと思いますよ。本当に人間関係って変わっていく!!

順風満帆に見える人も、あとで聞いたら大変だった、とかもあったりしますしね。


逆に、今のりりさんだって、別の角度から見たらぜんぜんプラスなんですけど?みたいなこともあると思います。29歳で独身実家暮らし? いいじゃん!


あ、宇多丸さんもそうでしたよね?


そう、29歳はバリバリ、母と実家暮らしでした!(笑)
もちろん、それを引け目に感じた瞬間もなかったわけじゃないけど……地方によっては、「宇多丸さんは30近くまでずっとお母さんと一緒に暮らしてあげていて、親孝行やったね!」みたいに言われることも、マジであるんですよ!(笑)
そんな捉え方があんの!?って衝撃を受けました(笑)。


捉えようなんて本当に人それぞれというのが証明されましたね!


ということで……。
とにかく、「幸せ」のあり方を狭めるような固定的価値観と、自己卑下。
これが毎度おなじみの二大不幸感増幅セットなので。
ワナにハマらないよう気をつけて!

もし、なにかちょっと願い通りに進んでくれてないな、となっているときも、「思ってたのとは違ったけど、まぁこれもアリか」とか、「今はまぁいいか」とか、なんにせよとりあえず気が楽になる考え方をするよう心がけたほうが、とくにりりさんのような傷つきやすいタイプは、絶対いいはずですよ。

まぁ、すべてを自分に都合がいいように解釈してばっかりの、自己過信に振りきってるような人も、そりゃあどうかと思いますけども(笑)。
それでもやっぱり、自己卑下よりは確実にいい気がしますよ。


りりさんは、むしろ一度それぐらい振り切って過信してもいいぐらいじゃないですか。ちょうどよく自己肯定になったらいいなって。


ポジティブシンキングという言葉はすでに完全に陳腐化してはいますけども……ポジティブシンキングもネガティブシンキングも、両方別に根拠ないんだったら、どちらかと言えばやっぱり、とりあえずポジティブシンキングしといたほうがいいんじゃないの、みたいなことですかね。
どっちも幻想なんだから。


ですね!!


とくにりりさんはネガティブ傾向が現時点では強めのようなので、言っちゃえば一種の「ツール」として、上手にそういう考え方のコツを使いこなしてゆければ、少しは心持ちが軽くなったりしないかな、と。 

それに、今回の話なんかとくにやっぱり、繰り返しますが問題なのはその知人の態度のほうなんだからさ。
安易に「どうせ自分のせいなんだ……」で済ますんじゃなく、降りかかってきた理不尽に対して「正しく怒る」ことも、ときには間違いなく必要なんじゃないでしょうか。
『虎に翼』ばりに「はて……?」と(笑)、ふと感じた違和感の根源にいちいちしっかり向き合ってみるのも、りりさんにはきっと突破口になると思います。

なんであれ、とにかく自分ファーストで!
人にどう接するかとかは、その後の話です! 

オマケとして、さっき言った「うまく行かないことや悲しいこと苦しいこと全部含めてその人固有の人生」、だからそんな自分自身を丸ごと応援してあげようよ!という気持ちに心底なれるエンターテインメントとして、りりさんもとうにご覧になっているかもしれませんけど、『インサイドヘッド』『インサイドヘッド2』も、改めてみなさんにおすすめしておきたいと思います。
こんなふうに、それこそ自己評価がダダ下がりになってしまうようなときまで含めて「生きるという経験」そのものを全肯定してくれるような作品も、なかなかないと思うんで。
「私の心、がんばれ!」って、ホントになりますよ。


私も観たいです! りりさんも観よう! お互い、みんな、がんばれ自分!




【今週のお絵描き】

画・宇多丸


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:55の生放送)をはじめ、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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