チームリーダーの私を飛び越え、上長が部下に細かい指摘。チームは混乱……。こんなとき、どうする? 《板挟み状態編-6》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
リーダーとして働く女性が実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、技術開発部で開発業務に携わり、リーダーとして働くなぎささんに、チームが混乱してしまった際の仕事の進め方について伺いました。細かいところまで指示をしたがる異職種出身の上長に、かき回される部下たち。チーム全体の雰囲気も悪化してしまった状況を改善するために、なぎささんが行った働きかけとは?
上長が私の部下に細かいことまで直接口出し。時間を取られ、進行に悪影響も……
技術開発部に所属し、建設現場での困りごとを解決するための技術や建物の設計を補助するシステムを開発しています。設計分野出身の部下2人とチームを組んで、私はリーダーとして業務の管理なども行っています。
私たちのチームを含むグループ全体をまとめている上長は、建設現場に従事してきた人で、設計分野については専門外であるにも関わらず、細かいことまで指示を出したがるタイプ。
私に部下への指示を任せていただいて、私と上長の間で進捗管理などの話を進められればよいのですが、上長は部下に直接口出しをしてしまうので、チームとしての統率が取れず困ってしまっていました。
例えば、打合せは別で設けているにも関わらず、毎週月曜の朝一番に、すごく細かい業務内容についての確認と指示のメールが、上長から直接部下にいくんです。CCに私も入っているのですが、メールがたくさん飛び交っていて、みんな週の初めの時点で疲れ切っていました。
それらに対応することに時間がかかるので、部下からも「どうにかなりませんか」と相談を受けていたんですよね。
以前いた設計の部署では、自分の上司は同じ設計という専門分野の人ばかりだったので、共通認識の中でスムーズに仕事ができていました。今の部署のように統括するのが違う専門分野の人となると、その下でチームを組み業務を進めるには策を凝らすことが必要なんだなと実感しました。
そもそも一口に建築の技術職と言っても、専門分野が意外とパキッと分かれていますし、人それぞれ異なる専門知識を持っています。特に今のグループは異なる専門分野のメンバーが集まっているので、統括する側が部下の業務の細かい内容をすべて理解するのは不可能に近いんです。
そのため、部下と専門分野が近い私が窓口となり、上長にチームの進捗共有や報告をするのが良い方法だと考えていたのですが、上長は部下の方に指示や質問を投げてしまう。結局は上長に必要以上に専門的な内容を説明して理解してもらうための時間が必要になってしまい、もどかしく思っていました。
「部下への指示や指導は私に任せてください」と直談判。役割の再確認で混乱を最小限に
社内では、役職ごとに担当役割を分けており、もちろんチームリーダーの役割も決められています。
それを明確にするためにも、「私がリーダーとしてメンバーをまとめる役割を任せていただいているはずなのに、上長が私を飛び越えて部下に指示を出すのは、役割として違っていますよね」と上長に直談判をしました。
このとき、腰を据えて話をして、一緒にそれぞれの役割の見直しをしたことで、納得してもらうことができました。話し合いの際は、「私に部下の指導を任せていただくことで、上長もほかの仕事に時間を充てられますよ」といった上長にもメリットのある言い方を心がけました。
上長から部下への質問については私からまとめてお答えするので、直接部下にメールで投げかけるのはやめてほしい、という具体的な話もしました。また、改善策として、金曜に状況確認の打ち合わせをして、そのまとめを月曜の朝に私から提出するといった提案も受け入れてもらいました。
上長の負担も減り、部下も意見が言えるようになり、結果的にWin-Win
直談判をしたことで、混乱していた状況は改善されました。
会議では、「何か発言すると上長が細かい質問を始めて、話がまとまらなくなるから……」と発言することを避けていた部下2人も、状況が落ち着いたことで、意見を出せるようになりましたね。
以前は上長も会議が盛り上がらないと気にしていたので、議論が活発になり、お互いに良い効果が生まれました。
上長込みと上長なしの会議を隔週で行うようにしたことも、部下から意見がちゃんと出るようになった要因かもしれません。
私にはいまだに細かいことに関するメールがくるので、正直まだまだストレスを感じることもありますが、月曜の朝から大量のメールが飛び交うストレスに比べたら、大したことではないと感じます。
思い返してみると、かつて人事部に所属していた際、「人事の仕事は初めて」という上司が異動してきたんです。その方は、既に自主的に動けるメンバーにはふわっと指示をするという対応で、「任せる」こともマネジメントで大事だと思っているようでした。実際、部下である私も仕事がしやすく感じていました。
もちろん、細かい指示をする方がいい場面もあると思います。人事部の上司と、現在の上長、どちらとも接してみて、リーダーは「総合的にみる」という目線が大切なのだと実感しましたね。
今は部下のモチベーションも保てるようになり、チームの雰囲気も良くなったので、安心して仕事に励むことができています。
イラストレーション:高橋由季